映画「未来の食卓」に見る情報操作
「未来の食卓」という映画が、来月(2009年)8月8日(土)から公開される。東京・渋谷のアップリンクなど、全国主要都市の映画館で公開予定だ。
映画「未来への食卓」は、南フランスのある村が舞台。そこの村長が、子供たちの学校給食と高齢者たちの宅配弁当を、オーガニックのものに変えると宣言。「オーガニックなんてそんな高いものを本当に使えるのか?」という人たちの声もあったがこの試みは実行に移される。この映画は、その村での取り組みを追うことで、食の問題を提起するドキュメンタリー映画のようだ。
映画の舞台となった村では、このオーガニック食への取り組みにより、変化が見られるようになる。
オーガニック給食や学校菜園での野菜作りを通して自然の味を覚えた子供たちに巻き込まれ、小さな村は少しずつ変化していきます。(でも、すべての子供が野菜好きになるには、時間がかかります。フライドポテトが大好きな低学年のフィリップは、まだ抵抗しています!!)
映画の予告編が公開されているので、ご覧になって欲しい。
冒頭、パリのユネスコ本部で誰かが発表している。
「今の子供たちは、近代史においてはじめて親の世代よりも健康的に劣るかもしれません」。
その発表の最中に流される映像の中には、果樹園に散布車を使って農薬を散布している様子が映し出されている。暗に農薬がその原因だと示したいようだ。
そして、舞台となっている南フランスの村の美しい風景と、子供たちの楽しそうな表情、おいしそうな野菜の映像。キャプションはなかったが、映されている野菜はオーガニックのものだということだろう。子供たちがおいしそうに食べる様子が映し出されている。
その後に続くのが、「農薬を撒いていた頃は絶対自分が作ったものは食べなかった」という証言。恐らく農民へのインタビューだろう。
そして「あの娘がガンだなんて絶対認めたくなかった」という恐らく母親だと思われる女性の証言が、何の脈絡もなく入る。
また、この映画の公式サイトに、「子供たちの未来を考える “おいしい”オーガニックライフのススメ」と題し、下のような文章が掲載されていた。
映画の冒頭、ユネスコ会議での「あなたの周りに、がんや糖尿病にかかった人はいますか?」という健康科学研究者の問いかけに、出席者のほとんどが挙手しました。ヨーロッパでは、癌や糖尿病などの生活習慣病の70%は食習慣を含む、環境に原因があると言われています。あなたはこの数字をどのようにとらえますか?地球の温暖化、環境破壊にも農業のあり方と食生活が密接に関係しています。この映画は、有機栽培農家と一般農家との対話や、家族を癌で失った主婦の体験を通して、私たちでもできる新しい生活を見せてくれます。
一見素晴らしいことを説いているように感じるが、医学的、科学的な根拠はなく、自然食を推進する者たちに都合の良いように論理がすりかえられている。
一定の年齢を過ぎた大人に、「あなたの周りに、がんや糖尿病にかかった人はいますか?」と聞けば、誰でも「はい」と答えるだろう。
がんや生活習慣病の原因は、農薬なのか?
まだ公開前で、この映画を見たわけではないが、「未来の食卓」の映画の予告編と公式サイトでの同映画の宣伝を見る限りでは、まるで農薬、それと予告編では言及はなかったが、食品添加物が私たちの健康を脅かすすべての原因で、食べ物をオーガニックのものに変えれば、すべて問題が解決。私たちは健康に、そして幸せに暮らせると言っているように感じられる。
だが、そんなことはあり得ない。
「ヨーロッパでは、癌や糖尿病などの生活習慣病の70%は食習慣を含む、環境に原因があると言われています」と言っている。そうだ。そのとおりだ。いちいち「ヨーロッパでは」などと言って欧米崇拝傾向が強い、多くの日本人心を動かそうとしなくても、日本においても一般的にそう考えられている。
細かいことをいうと発がんのメカニズムは完全に解明されているわけではないので、すべての癌がそうだとは限らない。糖尿病も1型の糖尿病はそうではないが、成人がかかる2型糖尿病は、食生活が大きく関係している。
しかし、その食生活というのは、オーガニックのものを普段食べているかどうかではない。普段自分が食べているものの中身のことだ。
塩分、糖分、脂肪分、カロリーの摂りすぎ。そしてこれに運動不足やストレスが重なって、脳卒中、心臓病、糖尿病といった生活習慣病が、場合によっては癌が引き起こされるのだ。食べているものがオーガニックであるかないかなんて関係ない。たとえオーガニックとか、いわゆる自然食のものを食べていたとしても、偏ったものばかり食べていたら、生活習慣病や癌で死ぬ可能性はある。
無農薬の国産小麦のパンに、自然食業者が売っている肉で作ったハンバーグをはさんで作ったハンバーガー、有機JASオーガニック認定のジャガイモで、オーガニックの油で揚げて作ったフライドポテト。国産のオーガニック小麦でカステラを作り、クリームはどこかの自然食業者の低温殺菌牛乳で作り、砂糖は国産の洗双糖で作ったケーキ。そんなものが実在するかどうかは知らないが、あったとして、そんなものばかり食べていたら、健康的な食生活とは言えない。そのうちに病気になる。
肉や砂糖、脂肪を多く含む食べ物を食べすぎで、野菜をほとんど食べない。そんな偏った食生活、そして体を動かさないことによる運動不足が生活習慣病の原因だというのが医学的な常識だ。普段食べている農産物への農薬の散布の有無、オーガニックであるかないかということは、直接関係はない。
癌や生活習慣病の増加による今の子供たちの将来の健康を問題にし、子供をがんで亡くした母親の映像や言葉に合わせて農薬の散布の映像を流し、その解決策であるかのように、オーガニックの野菜(たぶん)を食べる楽しそうな子供たちの映像を流す。
情報操作以外の何ものでもないではないか?
娘を癌で亡くした母親。本当に娘の癌の原因は、農薬だったのか?
それが医学的に、科学的に証明ができているのか?
証明できていないのなら、あのような映像は流すべきではない。癌が農薬が原因だという誤った認識が広まることは、発ガンの本当のメカニズムの研究や、正しい治療の妨げになることも考えられる。オーガニックのものを食べてさえいれば安心。がんにならないという誤った認識が広まれば、自然食業界は儲かってたまらないだろうが、癌の発見の遅れにより、手遅れになる人が出てくることも考えられる。
そしてもし、農薬が本当にそんなに危険なら、農家はどうなるのか?
農産物に残留する微量な農薬により、その農産物を食べた人が、糖尿病になったり、心筋梗塞になったり、脳卒中になたり、癌になったりするのであれば、農薬を普段撒いている農家の人たちはどうなるのだ?
この映画の宣伝をする者たちの言っていることがもし本当なら、いや彼らは直接言及していない。このあたりがプロの仕事だろう。イメージを使って、たくみに予告編の視聴者を自分たちの都合の良い方向に誘導していく。「農薬は危ない、だからオーガニックのものを食べろ」と。
だがもしそれが本当なら、世界の多くの農民は、既にこの世に存在しないはずだ。
「地球の温暖化、環境破壊にも農業のあり方と食生活が密接に関係しています」とも言っているが、地球温暖化の原因は、人間の経済活動による「二酸化炭素の排出」ではなかったのか?いつから「農業のあり方と食生活」が関係するようになったのか?
地球温暖化の原因が二酸化炭素かどうかというのも怪しいわけだが、ここでは言及しない。だが食生活とこじつけるのは、完全な誤りだ。
地球という巨大な太陽系第3惑星を、私たちがたとえば、ハンバーガーのようなジャンクフードを毎日食べるようにすれば、温めることができるのだろうか?もしそれが本当なら、もう人類は未来に訪れるであろう氷河期を恐れる必要はなくなる。生活習慣病で死ぬ危険は高まるが。
ウソで誰の命も救うことはできない。
環境も守ることはできない。
この映画は、自然食の宣伝には最適だが、特定の利害関係者の利益のために、人々にウソをつき、ウソを事実であるかのように信じ込ませることは許されない。
オーガニックではない通常の栽培で生産に従事する多くの農家の人たち、そして食品業界の人たちへの信頼を、不当に損なうものでもある。
この映画の関係者には、真実のみを語ってほしい。
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2009年07月11日 コメント&トラックバック(2) | トラックバックURL |
カテゴリ: 食の安全
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[...] この質問、というかほとんど要求のようなものを行ったのは、東京のアップリンクという映画館。「未来の食卓」という宣伝方法に極めて大きな問題のある映画を、8月(2009年)から上映。大手自然食宅配業者や自然食的なものを擁護する立場で営業活動を行う文化人のような人々と組んで、オーガニック業界の利益拡大を目指しているように見える。 [...]
ピングバック投稿者: オーガニック利権の拡大?’09衆院選各政党への質問 | 真実探究 — 2009年09月03日
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[...] 未来の食卓は、このブログ内でも何度か取り上げ、話題していた映画。その理由は、映画の宣伝手法が、極めて悪質だったから。科学的な根拠やデータも明示せず、不必要に農薬を中心とする化学物質の害を煽る。ガンを中心にあらゆる成人病、そして地球温暖化でさえも、農薬が原因であると無理やりこじつける。そんな予告編をこの映画の宣伝サイトで公開していたため、当ブログ内の記事、映画「未来の食卓」に見る情報操作などで問題にした。 [...]
ピングバック投稿者: 情報操作映画「未来の食卓」を、みんなで見に行こう! | 真実探究 — 2009年09月29日
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[...] この質問、というかほとんど要求のようなものを行ったのは、東京のアップリンクという映画館。「未来の食卓」という宣伝方法に極めて大きな問題のある映画を、8月(2009年)から上映。大手自然食宅配業者や自然食的なものを擁護する立場で営業活動を行う文化人のような人々と組んで、オーガニック業界の利益拡大を目指しているように見える。 [...]
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