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ライフサイクルアセスメントについて

魚がそんなに大事なのか?

ライフサイクルアセスメント(LCA)」とは、原料の調達から消費、廃棄までを含めた総合的な視点から環境への影響を測る考え方。合成洗剤も石けんも、このLCAの視点で見ると、そんなに大きな違いはありません。



 「合成洗剤は環境に悪くて危険、石けんは環境に優しくて安全」

 これだけ環境や健康への意識が高まってきた現在でも、こんな考え方が
日本の多くの消費者の中に根強くあります。

 このサイトの中ではさまざまな視点からその考え方が誤りであることを述べて
いますが、ここではライフサイクルアセスメントの視点から、そのことを
説明してみたいと思います。


 科学では「リスクとベネフィット」という考え方をします。リスクはある化学物質
を使った場合の危険性や、環境に与えると考えられる影響、ベネフィットはその
化学物質を使った場合に得られる利益、便益を意味します。

 合成洗剤を使った場合のリスクとベネフィットは何か?合成洗剤を追放し、
すべて石けんに切り替えた場合のリスクとベネフィットは何か?を合成洗剤と
石けんをめぐる問題について、議論するときには考えるべきでしょう。

 それには原料の調達から家庭での使用、環境中に放出されてからの環境への
影響といった総合的な視点が必要になります。

 石けん運動をしている人と話をすると、合成洗剤のリスクばかりをあげて批判
します。確かにリスクはあります。でも、石けんにも大きなリスクがあるということ
を全く理解しようとしません。こちらが数字や実例をあげて説明しているのに、
こじつけ的な理屈で合成洗剤を批判します。

 石けんと合成洗剤の違いとか、そのリスク評価というと難しいですが、両者
の長所や短所を理解することなんて別に難しいことではありません。小学生で
も理解できることです。いや、小学生だからこそ理解できるかも知れません。
素直にものごとを考えることができればわかることです。

 例えば、現在の合成洗剤の中には、水30リットルあたり15グラムで洗濯
できるものがあります。一方、粉石けんで洗濯しようとすると35グラムくら
いの量が必要です。水質への影響を考えたらできるだけ使用量が少ない
方が望まし
いわけです。単純に使用量だけで比べれば、合成洗剤の方が
環境に優しいということになります。

 こんなことを言うと、「合成洗剤は毒性が強いから使用量が少なくてもだめ
だ」というようなことを言われます。それに合成洗剤は「濃縮されているから
使用量が少なくてすむ」とも言われます。

 石けん会社、石けん運動に関わる人たちは、合成洗剤の毒性について、
「発ガン性がある」とか「催奇形性がある」など様ざまな毒性があるかのように
言って大騒ぎをしていましたが、現在はそれらは科学的にすべて否定され
ています。

 だからなのでしょう。石けん運動の人たちや、石けんメーカーは、最近は水の
中の生物への影響をことさらに問題視するようになっています。

 合成洗剤は、確かに魚など水の中に棲む生物にとっては危険なものです。
石けんメーカーのパンフレットなどを見ると、合成洗剤で魚を殺す実験をしている
記事がよくが見られます。「合成洗剤を入れたビーカーの魚は死んでしまったが、
粉石けんを溶かした方の魚は生きている。だから合成洗剤は危険」だと結論付け
るものです。

 何かの本やHPなどで、そんな写真見たことがあるのではないでしょうか?この
実験のとおり、合成洗剤は確かに魚には危険です。

 が、これは人に対しても危険だということを意味するのではありせん。

 魚が死ぬのは、合成洗剤の界面活性剤がエラに取り付き、エラ呼吸を妨げる
のが主な原因です。一方、石けんは、水の中のカルシウムやマグネシウムと結
びついて「金属石けん(石けんカス)」という水に溶けない物質になってしまうため、
魚への影響が少ないのです。「合成洗剤で魚が死ぬ」といっても、エラ呼吸をしな
いヒトや陸上の動物には関係のないことです。

 それでも魚たちの命を心配して、「合成洗剤を使うな」という人たちはいま
す。魚に限らずあらゆる生き物に対して愛情や優しい気持ちを持つことは、大
切なことだと思います。それがないから人間は、人間の都合だけで環境を利用
し、多くの生物が絶滅させ、地球環境まで汚染してしまったのです。

 でも、石けんを広めようとしている人たちには、日本の川にいる魚の命だけ
でなく、もっと世界のことを考えて欲しいと思います。

 合成洗剤を禁止してすべて石けんに切り替えた場合のリスクは何なのか?と
いうことを考えて欲しいと思います。
 
 この場合のリスクとは、「東南アジアの熱帯林が破壊される恐れがある」と
いうことです。

 石けんは油脂から作られます。原料はどんな油でも作れるのですが、最近は
パーム油から作られることが多くなってきました。ココナツ油やオリーブ油、
牛脂などから作られる石けんもありますが、日本で急増する(であろう)石け
んの需要を満たせるだけの大幅な増産が可能なのはパーム油くらいです。

 ヤシノミ洗剤を始め、パーム油で作られる合成洗剤もありますが、先ほどの
例のように使用量のことを考えると石けんの方が合成洗剤よりはるかに多くの
油脂原料を使用します。

 石けんの原料になるパーム油は、「アブラヤシ」という椰子の実から作られ
ます。アブラヤシは主にマレーシアなどの熱帯林を破壊して作られたプランテ
ーションで栽培されます。熱帯林には極めて多様な生物が形作る生態系があり
ます。昔から自然とともに暮らしてきた先住民の住む場所、狩猟や採集をする
場所でもあります。

 実は、石けんを推進する人たちが思うほど、日本の川の合成洗剤の濃度は高
くありません。魚が死ぬような濃度ではないのです。確かに魚にとっては洗剤
なんてない方が快適だと思います。でも、日本の川にいる魚たちを心配して、
日本のほとんどの家庭で石けんを使うようになった時の代償はなんでしょうか?

 それははるかに多くの生命の生きる場所、自然と共生した伝統的な暮らしを
守っている人たちの生きる場所を今よりさらに破壊することです。パーム油は
食料にもなります。金持ちの日本人が石けんにするためにパーム油を買いあさ
れば、相場が上がり、貧しい人たちが買えなくなってしまいます。

 熱帯林を破壊し、多くの生命を奪うというとても大きなリスクに比べ、日本
の川の魚に快適な環境を与える(だけ)というのは、あまりにも小さなベネフ
ィットと言えます。

●合成洗剤と石けんをライフサイクルアセスメントで評価する

 今回の説明したような手法、つまりある品物を原料の生産から実際に消費者
が使用したり廃棄するまで総合的に評価し、環境への影響を見る方法が、
「ライフサイクルアセスメント」と呼ばれるものです。

 ライフサイクルアセスメントの観点から見ると、「石けんは○で、合成洗剤
は×」のような単純なことは言えません。石けんには水の中の生物に優しいと
いう長所がある反面、大量に食料にもなる油脂原料を必要とする欠点があり
ます。

 合成洗剤は、水の中の生物にとっては危険なものですが、石けんの数分の1の
原料で済むという長所があります。石油からも作れるので、食糧にもできる油
脂原料を節約できるという利点もあります。

 それぞれの長所や短所を考えて、長所を生かすような使い方をするのが一番
環境に優しい使い方だと言えます。


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「合成洗剤・石けんにまつわる7つの誤解」

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